コラム

【遺産分割】【判例・裁判例】再転相続における特別受益の考慮

Aは平成7年12月7日に死亡しました(第1次相続)。Aの相続人としては、配偶者B、子X、Y1、Y2がいました。

しかし、Aについての遺産分割終了前に、Bが平成10年4月10日に死亡しました(第2次相続)。Bの相続人としては子X、Y1、Y2がいました。

そのため、Xが第1次相続、第2次相続について遺産分割の審判を申し立てました。その審判の中で、Xが第1次相続についてはY1、Y2が特別受益を得ている旨の主張をし、第2次相続についてはY2が特別受益を得ている旨の主張をしたところ、相続が開始して遺産分割未了の間に第2次の相続が開始した場合において第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときの持戻しの要否が問題になりました。

 

これについて、裁判所は、相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において、第2次被相続人が取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は、実体上の権利であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり、第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときは、その持戻しをして具体的相続分を算定しなければならない旨判断しました。

 

(最高裁判所平成17年10月11日第3小法廷決定)

【相続放棄】【判例・裁判例】民法921条3号にいう相続財産と相続債務

Xは、昭和49年7月ころ、Aとの間で、A所有土地を360万円で買い受ける契約をし、代金を支払いしました。そして、Aが司法書士であったことから、XはAに所有権移転登記手続を依頼しましたが、Aは手続をしないまま昭和52年1月25日に土地をBに売却し、同年9月16日に死亡しました。

Aの相続人であるY1~Y3は、同年12月16日に家庭裁判所に限定承認の申述をしましたが、甲のXに対する債務を財産目録に記載しませんでした。同申述は、昭和53年1月26日に受理され、同月30日にY1が相続財産管理人に選任されました。

他方、Bが昭和53年5月2日に当該土地をCに売り渡したので、Y1らは共同相続登記をしたうえ、AのBに対する売買の履行として、Cに対し中間省略により直接所有権移転登記を行いました。

そのため、Xは、Y1らが登記名義を移転したのは買主としてのXの権利を侵害する不法行為である等を理由として、Y1らに対して損害賠償を求める裁判を起こしました。その裁判の中で、限定承認をしたY1らが相続財産の一部を財産目録に記載しなかったことから、単純承認をしたとみなされるのかが問題になりました。

 

これに対して、裁判所は、民法921条3号にいう「相続財産」には、消極財産(相続債務)も含まれ、限定承認をした相続人が消極財産を悪意で財産目録中に記載しなかつたときにも、同号により単純承認したものとみなされると解するのが相当である旨判断しました。

 

(最高裁判所昭和61年3月20日第1小法廷判決)

【不当解雇・雇止め・退職勧奨】【判例・裁判例】有罪判決から約27年経過した公務員の失職扱いの有効性

Xは、郵政事務官として採用され、A郵便局に勤務して郵便集配業務に従事していました。ところが、採用になる約8か月前の学生時代にベトナム反戦行動に参加し、その際犯した公務執行妨害罪により、採用から約7か月後の昭和48年12月7日に懲役4月、執行猶予2年間の有罪判決を受け、同判決は確定しました。

Xは、有罪判決を受けた事実を隠してその後も勤務を継続していたところ、任命権者であるA郵便局長は、有罪判決確定時から約26年11か月後の平成12年11月13日に、Xに対し、同人は国家公務員法76条、38条2号により本件有罪判決確定時に失職した旨の通知をしました。

そのため、Xが、国に対し、国家賠償法1条に基づいて、定年退職までの給与及び退職手当相当額の損害賠償を求める裁判を起こしたところ、失職事由が発生した後も約27年にわたり勤務を継続した場合に、国(旧日本郵政公社、郵便事業株式会社が逐次その地位を承継)においてXが国家公務員法76条、38条2号に基づき失職した旨を主張することが、信義則に反し権利の濫用に当たるかが問題となりました。

 

これについて、裁判所は、郵政事務官として採用された者が、禁錮以上の刑に処せられたという失職事由が発生した後も約26年11か月にわたり勤務を継続した場合に、国(旧日本郵政公社、郵便事業株式会社が逐次その地位を承継)において上記の者が国家公務員法76条、38条2号に基づき失職した旨を主張することは、上記の者が上記失職事由の発生を隠して事実上勤務を継続し給与の支給を受け続けていたにすぎないという事情の下では、信義則に反し権利の濫用に当たるということはできない旨判断しました。

 

(最高裁判所平成19年12月13日第1小法廷判決)

【相続】【判例・裁判例】財産全部を相続させる遺言がある場合の遺留分侵害額算定における相続債務額の加算の可否

Aは、平成15年7月、その所有する財産全部をYに相続させる旨の公正証書遺言を行い、同年11月に死亡しました。Aの法定相続人は、子であるXとYでしたが、Aの遺言に基づき、Aの死亡後、遺産全部の権利が直ちにYに承継されました。

平成16年4月、XはYに対して遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をしました。

他方、Yは、平成16年5月、Aの遺産である不動産について相続を原因とするAからの所有権移転登記を経由しました。

そのため、Xが、Yに対し、遺留分減殺を原因とする持分の所有権移転登記を求める裁判を起こしたところ、相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において、遺留分の侵害額の算定に当たり、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することの可否が問題になりました。

 

これについて、裁判所は、相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には、遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り、相続人間においては当該相続人が相続債務もすべて承継したと解され、遺留分の侵害額の算定に当たり、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない旨判断しました。

 

(最高裁判所平成21年3月24日第3小法廷判決)

【遺言】【判例・裁判例】遺言の撤回と復活

XらとYは、平成3年11月15日に死亡したAの子です。

Aは、遺産の大半をYに取得させる甲遺言をした後、乙遺言をもって甲遺言を撤回し、更に、乙遺言を無効とし甲遺言を有効とする旨の丙遺言をしました。そして、Yは、甲遺言に基づいて、Aの遺産である不動産について所有権移転登記手続を行いました。

そのため、Xらは、甲遺言は乙遺言によって撤回され失効したと主張し、Yに対して、甲遺言の無効確認を求めるとともに、Aの遺産である不動産について、Y名義の所有権移転登記を法定相続分に従った共有登記に更正する登記手続を求める裁判を起こしたところ、遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回することにより当初の遺言の効力が復活するかが問題になりました。

 

これについて、裁判所は、遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、当初の遺言の効力が復活する旨判断しました。

 

(平成9年11月13日第1小法廷判決)

【交通事故】【判例・裁判例】交通事故と医療事故の競合

自転車に乗っていたA(6歳の男児)が、交差点内でZの運転するタクシーと接触、転倒し頭部などを負傷しました。

Aは事故後直ちに救急車でY病院に搬送されましたが、Y病院の医師Bは、Aの訴え内容や、Aの意識が清明であったことなどから、歩行中の軽微な事故であると考え、さらにレントゲン写真で頭がい骨骨折を発見できなかったことから、CT検査をしたり、病院内で経過観察をすることなく、負傷部分の消毒と抗生物質の投与だけで、「何か変わったことがあれば来るように」などといった一般的な指示のみでAを帰宅させました。

ところが、帰宅後、Aの容体が急変し、死亡してしまいました。死因は、頭蓋外面線状骨折による硬膜動脈損傷を原因とする硬膜外血しゅでしたが、硬膜外血しゅは、早期に血しゅの除去を行えば、予後は良く、高い確率での救命の可能性がありました。

そのため、Aの両親であるXらはZとY病院の行為がAに対する共同不法行為に当たるとしてY病院に対して損害賠償の裁判を起こしたところ、その中で、Y病院が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害額の一部に限定することができるか、どのように過失相殺を行うかが問題となりました。

 

これについて、裁判所は、前者については、交通事故と医療事故とが順次競合し、そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって、運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり、結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し、責任を負うべき損害額を限定することはできない旨判断し、後者については、過失相殺は、各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしんしゃくしてすることは許されない旨判断しました。

 

(最高裁判所平成13年3月13日第三小法廷判決)

【交通事故】【判例・裁判例】死亡した幼児の財産上の損害賠償額の算定と将来得べかりし収入額から養育費を控除することの可否

10才の女児Aがタクシー会社であるY1社のタクシーにはねられ死亡してしまいました。そのため、Aの両親であるX1、X2が、Y1社、運転者Y2、Y1社の代理監督者Y3、Y4に対して損害賠償を求める裁判を起こしました。

その裁判の中で、死亡した幼児の財産上の損害賠償額を算定するにあたり、将来得べかりし収入額から養育費を控除することができるかが問題になりました。

 

これについて、裁判所は、交通事故により死亡した幼児の財産上の損害賠償額の算定については、幼児の損害賠償権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなった場合においても、将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきではない旨判断しました。

 

(最高裁判所昭和53年10月20日第二小法廷判決)

【相続放棄】【判例・裁判例】相続放棄の熟慮期間の起算点2

Aは平成18年6月に死亡したところ、Aの相続人には妻B、子X、Cがいました。

Xは、昭和52年に結婚するまでA、B及びCと同居して生活していましたが、その後Aらと別居して生活するようになり、Aと会うのは盆や正月等年に数度にすぎませんでした。

CとXの間にでは、CがAのいわゆる跡取りの立場にあり、CがAの遺産を引き継ぎ、Xはこれを取得しないとの点において認識を共通にしており、相続に際しては、XがCに一切をゆだね、手続上必要があればその指示に従い、協力する旨了解し合っていました。

Cは、Aの死後間もない平成18年6月中に、Aの相続人らを代表して、Aが生前出資し、貯金し、建物更生共済に加入するなどして取引していたD農協を訪れ、AのD農協に対する債務の存否を尋ね、債務はない旨の回答を得ました。そこで、Cは、Bとともに、D農協におけるA名義の普通貯金口座の解約及び出資証券の払戻しの手続をするとともに、D農協を共済者とする建物更生共済契約の名義人をAからBに変更する手続をしました。この手続に際し、XはCから連絡を受け、その求めに応じて、書類に押印する等必要な協力をしました。
ところで、Aは、平成3年ないし平成8年ころ、D農協を貸主とする3口の消費貸借契約(元金合計3億円)につき連帯保証人(うち1億円については連帯債務者)となっていました。このうちAが連帯債務者となっている1億円の貸付けについては連帯保証人兼担保提供者による担保不動産の任意売却交渉が進行していたことから、D農協は債務者らに対する返済の請求を控えていましたが、任意売却が不可能な状況に至ったため、担保不動産の競売により貸付金の回収を図ることとし、平成19年9月ころ、その旨をB、X、Cに通知しました。
Xらは、D農協による上記通知によりAの債務を初めて知りました。そのため、Xは、平成19年11月、家庭裁判所に対し相続放棄の申述受理の申立てをしたところ、民法915条1項本文所定の期間の起算点が問題になりました。

 

これについて、裁判所は、相続債務について調査を尽くしたにもかかわらず、債権者からの誤った回答により、債務が存在しないものと信じて限定承認又は放棄をすることなく熟慮期間が経過するなどした場合には、相続人において、遺産の構成につき錯誤に陥っているから、その錯誤が遺産内容の重要な部分に関するものであるときは、錯誤に陥っていることを認識した後改めて民法915条1項所定の期間内に、錯誤を理由として単純承認の効果を否定して限定承認又は放棄の申述受理の申立てをすることができる旨判断しました。

 

(高松高等裁判所平成20年3月5日決定)

【労働問題】【判例・裁判例】会社の安全配慮義務

Y社の見習い従業員であるAは、宿直勤務中、以前より面識はあるものの、その素行の悪さから警戒していた元従業員Bに、意に反して社屋内に立ち入られてしまいました。Aは、Bに対して退去を促しましたが、Bはそれに応じませんでした。そして、Aは、Bから威圧的態度に出られたため、「Bが来ると商品が紛失する。」などと言って反抗したところ、もともと窃盗の意図をもって訪れていたBに首を絞められたうえバットで頭部を殴打され、殺されてしまいました。

そのため、Aの両親であるXらは、Y社の安全配慮義務違反を理由にY社に対して損害賠償を求める裁判を起こしたところ、Y社に安全配慮義務違背に基づく損害賠償責任があるかが問題になりました。

 

これについて、裁判所は、会社が、夜間においても、その社屋に高価な反物、毛皮等を多数開放的に陳列保管していながら、右社屋の夜間の出入口にのぞき窓やインターホンを設けていないため、宿直員においてくぐり戸を開けてみなければ来訪者が誰であるかを確かめることが困難であり、そのため来訪者が無理に押し入ることができる状態となり、これを利用して盗賊が侵入し宿直員に危害を加えることのあるのを予見しえたにもかかわらず、のぞき窓、インターホン、防犯チェーン等の盗賊防止のための物的設備を施さず、また、宿直員を新入社員1人としないで適宜増員するなどの措置を講じなかったなどの事実関係がある場合において、1人で宿直を命ぜられた新入社員がその勤務中にくぐり戸から押し入った盗賊に殺害されたときは、会社は、右事故につき、安全配慮義務に違背したものとして損害賠償責任を負うものというべきである旨判断しました。

 

(最高裁判所昭和59年4月10日第三小法廷判決)

【遺留分】【判例・裁判例】遺留分権利者からの不動産持分移転登記手続請求訴訟において受遺者が裁判所が定めた価額による価額弁償の意思表示をした場合における判決主文

Aには、Y、B、Xの3人の相続人がいましたが、Aは、自筆証書遺言により全財産をYに遺贈する旨の遺言をした後死亡しました。

そして、Yは、Aの遺産である不動産について、上記遺言に基づき、Yに対する所有権移転登記をしました。Xは、Yに対し、遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をし、上記不動産緒持分について所有権移転登記手続等を求める裁判を起こしました。

その裁判の中で、Yは、控訴審の口頭弁論終結時までに、裁判所が定めた価額により民法1041条の規定に基づく価額弁償をする意思がある旨を表明して、裁判所に対して弁償すべき価額の確定を求める旨の申立をしたため、遺留分権利者からの不動産の持分移転登記手続請求訴訟において、受遺者が裁判所が定めた価額による価額弁償の意思表示をした場合における判決主文が問題になりました。

 

これについて、裁判所は、減殺請求をした遺留分権利者が遺贈の目的である不動産の持分移転登記手続を求める訴訟において、受遺者が、事実審口頭弁論終結前に、裁判所が定めた価額により民法1041条の規定による価額の弁償をする旨の意思表示をした場合には裁判所は、右訴訟の事実審口頭弁論終結時を算定の基準時として弁償すべき額を定めた上、受遺者が右の額を支払わなかったことを条件として遺留分権利者の請求を認容するべきである旨判断しました。

 

(最高裁判所平成9年2月25日第三小法廷判決)

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